親友 番外編

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「おいしかったねー!」 車の中でそう話す響。 「俺は疲れたよ。早くナイター見てぇよ。」 もう、試合は終盤か、終わってる頃だろうが。 俺の言葉に、少し申し訳なさそうな顔をする。 「ごめんね?。つき合わせちゃって。」 「浅葱がどーしても来いって言うから仕方ねえだろ。」 そうだ、浅葱が悪い。 「なんか真紀さんも楽しんでたみたいだし、浅葱先生も楽しそうだし、よかったぁ。」 「そーだな。後は2人でどーにかするだろ。」 「うまくいけばいーなぁ。」 響は本心からそう思っているようで。 「あの子彼氏本当にいないのか?」 つい聞いてしまう。 「可愛いかったでしょー?。いそうなのに、いないんだよねぇ。」 そう言う響。 そして、少し深妙な面持ちで続ける。 「実は、真紀さんね、、香さんの彼氏のことずっと好きでね、、、。もう3年片思いしてるの。」 「3年!?」 響の言葉に驚いてしまう。 香さんという名前はよく聞いていた名前だ。 響のバイトで、指導係をしてくれていた大学生のことだと、すぐわかる。 そして、その彼氏とやらも確か響と同じバイト仲間だ。 今日会った彼女と、3人同じ大学の同じ学部でバイトも同じで、仲が良いと響は以前に話していた。 親友の彼氏を好きだってワケか。 しかも三年も。 毎日のように一緒にいて、恋心を抱きながら、2人を近くに見ているのは辛いだろう。 響の話を聞いて、俺の中で少し懐かしい気持ちが芽生えた。 昔の自分を思い出したからだ。 実は俺も昔同じ経験がある。 響には言っていない話だが。 まぁ、それは過去の話だから、今更どうでもいいが、彼女の気持ちを察すると、その状況は結構辛いものがあるんじゃないかと思う。 「それは、切ないな。」 「うん。もういい加減諦めなきゃって言ってて、彼氏探す気持ちになってたから、浅葱先生どうかなと思って、、、。」 そんな経緯があったとはな。 「まだその友達の彼氏のこと引きずってるんじゃないのか?」 三年も好きな相手なら、そう簡単に気持ちが切り替えられるとは思えない。 「たぶん、少しはあると思う。でも、そろそろ新しい恋をしたいって言ってたから、もし、それが浅葱先生だったらいいなと思って。」 ふぅん。 なんだか複雑だが。 浅葱に、彼女の殻を破ってやることができるのかと思う。 「ねぇ?なんで浅葱先生彼女いないのかな?」 響が唐突に聞く。 「モテそうなのにね。」と言う響。 「大学の時はいたけどな。それからはあいつもアメリカ行ったし、疎遠になってたから知らねえけど。」 「そうなんだ。」 「塾講は出会いないんだろ。まあ、高校生やら浪人生やら相手に仕事してるからな。」 「浅葱先生も幸せになれるといいね。」 「そうだな。」 まぁ、あとは本人同士の問題だ。 彼女の気持ちが変わるかは、浅葱次第ってとこか。 「とりあえず、これからの事は2人の問題だな。 俺らは役目を果たしたんだから、その先は2人に任せるしかねぇな。」 「うん。そうだよね。うまくいけばいいなぁ。」 響はそう言い、窓の外の夜景を見た。 ウィンドウに反射して移るその横顔を見ていると、このまま家には帰したくない衝動に駆られる。 「ちょっとドライブでもする?」 響を家に送り届けようと、響の家の方へと向かってはいたんだが。 俺がそう言うと、振り向き、笑顔を見せる彼女。 この笑顔をずっと見ていたい。 そう思いながら、車をUターンさせる。 季節は夏から秋へと変わろうとしていた。
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