親友 番外編

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「どうも!浅葱です!。」 「はじめまして。鈴木真紀って言います。」 ここは、駅近くにあるカフェ風ダイニング。 「ほら、おまえも何か言えよ!」 隣で浅葱が俺に小声でせっついてくる。 何か、、、ってなんだよ。 とりあえず、しぶしぶ、挨拶をする。 「どうも。伊藤です。」 なんで俺が、、、。 だいたい、なんだよ、この会は。 例の、響が紹介するという、厄介な会に、なんで俺がここにいるのか。 この状況が未だに納得いかない。 「響ちゃんの彼ですよね??。バイト終わりに迎えにきているの、前に見たことあります!」 そう話す彼女は、22とは思えない風貌だ。 化粧もそこそこしていて、うまく化けていると感心する。 ぱっと見た感じだと大学生というより、そこそこのOLに見える。 見た目は確かに可愛い部類に入るのか。 響がかわいい、かわいいと言っていたのがなんとなく頷けるが。 そんな事はどうでもいい。 俺の目の前に座る響は、ちらちら俺の顔を見て、気の毒そうな表情を見せている。 ったく、なんで、俺まで参加するハメになってるんだよ、、、。 響には悪いが、俺の態度は不服そのものだ。 響が紹介すると言ってから、連日のように浅葱からの電話があって、もはや、うんざりしていた。 勝手にやってくれと思っていたんだが。 そうだ、事の発端は、浅葱だ。 あの夜の出来事は、酔っ払いの戯言と思っていたが、浅葱はしっかりと覚えていて。 「響ちゃんの紹介の件、どーなった??」 と、連日のようかかってくる浅葱からの電話に、めんどくせえなと思いつつ。 「知らねえよ」とずっと交わしていたんだが、、、。 響にそれを教えると、響も本気で動く事を決めたようで、話を進める事になった。 「3人で飯でも食いにいけば?」と、俺が提案した。 相手の了解もとり、響も店を予約し、その方向で話が進んでいたんだが、、、。 浅葱にその事を告げると、まさかの返事が返ってきたんだ。 「え!?俺1人!?」 「いーじゃねえか。どうせ、おまえに紹介するっていう話なんだから。」 「いやいや、ちょっと待てよ!俺緊張するじゃん!!そんな一対一なんて!」 浅葱の言葉に呆れてしまう。 「は?おまえが紹介しろって言ったんだろ。響も同席するから、うまいことやってくれ。」 俺が突き放すと、浅葱は電話の向こうで騒いでいる。 「一人じゃ無理だって!!おまえ来てくれよ!頼むって!俺1人じゃ何喋っていいかわかんねぇじゃん!!」 おいおい、いくつだよ、おまえ、、、。 「高校生じゃねえんだから、、、。おまえ、もう28だろ。情けねえな。飯食って話して帰ってくるだけだろ。」 俺がそう言うと、響の話を持ちだしてきた。 「響ちゃんだって、困るだろ!一人で心細いだろ!!」 響は別に3人でもいいと言って店も予約している。 紹介する相手にも、了解を得ている。 「別に何も言ってなかったぞ。相手も3人でいいって言ってるんだから、そこは何も気にせず行ってこい。」 「無理無理!!俺が無理!!」 あー、うるせえなぁと思いながら、時間と場所をとりあえず告げて早々に電話を切ろうとした時だった。 「おまえが来ないなら、塾講の同僚連れていくからな!」 浅葱の口から出た言葉に、一瞬意味が分からず、携帯を手にしながら止まってしまう。 は??? 「はぁ?なんだそれ。意味わかんねぇんだけど。」 「俺一人じゃキツいし。そーするわ。いーだろ??」 いやいや、いいだろ?じゃない。 ちょっと待て。 浅葱と、紹介する彼女と、響と、、、もう一人男だ?? その状況を頭の中で思い描く。 それ、、、合コンじゃねえか。 「おまえ、その状況で、俺が、はいそーですかって言うとでも思ってんのか??」 「なら、おまえが来ればいーだろ!」 浅葱はわかってて、俺を無理にでも来させようとしている。 そんな合コンみたいな場に響を送り出す事は出来ないと、わかっていて、、だ。 こいつは、、、。 「ったく、わかったよ。俺も行けばいーんだろ??」 めんどくせぇ。 だが、俺が行かないと、知らない男に響を会わせることになりかねない。 しぶしぶ浅葱の取引に応じたんだ。 そして、今日を迎える。 今日は金曜の夜だ。 今日はナイターの野球の試合があって、家でゆっくりテレビでも見たいところなのに。 ったく、なんでこんな場所にいるんだよ。 不満気な俺を見て、響も気を遣っているのがわかる。 「何食べる?」 「これ美味しそうだよ?」、 俺に遠慮しながら、俺の顔色を伺いながら話しかける響。 「いーよ、適当に頼んで。」 俺がそう言うと、浅葱が隣で小声で言う。 「おまえ、ちょっとは楽しそうな顔しろよ。こうやって、みんな集まってんだから!」 、、、、。 「、、、わかったよ。」 めんどくさい。 だが、浅葱は楽しそうだ。 仕方ない。 とりあえず、飯でも食って、早々に帰るか。 浅葱はハイテンションで、響の友達に話しかけている。 なにが、一人じゃ喋れないだ。 ノリノリで喋ってんじゃねえか。 顔も浅葱の好みなんだろう。 響の隣に座る彼女を見ていると、彼氏がいないようには思えない。 この子、本当に彼氏いないのか? 浅葱もそう思っていたようで、響の友達に、直球を投げ込む。 「真紀ちゃん、本当に彼氏いないの??」 「いないんですよー!出会いが無くって!。毎日牛とか馬に囲まれてると、こういう場も縁遠くなっちやって、、、。」 牛と馬か、、、。 獣医学部ならそうだろうな。 「大学どこなの?」 浅葱が聞く。 「北大です。」 北大!? 彼女の言葉に驚いてしまう。 響から獣医学部とは聞いていたが、大学の名前までは聞いていなかった。 今までも、会話の中でバイト先の先輩の話は出てきたが、どこかの私大の獣医学部かとてっきり思っていた。 まさか北大とは。 北大と言ったら、北海道で最難関の国立大だ。 しかも、獣医学部だろ? 俺より頭いいんじゃねえのか、この子。 まぁ、浅葱は、俺より頭はいい。 アメリカへも留学していたし、浪人生相手に勉強を教えているから、そこらへんは全く気にしていない様子だが、、、。 「北大にこんな可愛い子いるのか?」 と、小声で俺に聞いてくる浅葱。 そう聞かれても、知らねえけど。 確かに、頭が良くて、美人で、彼氏がいないとなれば、寄ってくる男も数多いんじゃねえか? 28の男なんて、彼女にしてみれば、歳くったオヤジにしか見えねぇんじゃないのか? この話、無いな、、、。 そう思っていると、響の友達が、明るい笑顔で言う。 「浅葱先生、かっこいいですよね?モテそうだけど、彼女いないんですか?」 響も彼女の話に乗っかる。 「浅葱先生、話してると楽しいし!。面白いし!」 と、浅葱を褒め讃える。 浅葱は見た目は若いし、確かに顔は爽やかなイケメン風に映るのかもしれないが。 そんな事言ったら、調子に乗るだろう。 案の定、浅葱は調子に乗っていて。 「そーかな??そう言ってくれると、嬉しいなぁ。でも、なぜか彼女いないんだよ!なぁ、耕作!?」と、俺に話を振る。 俺に振るなよ、、、。 知るかよ。 早く帰りたい、、、。 「大学の時とか、アメリカ行ってたときは彼女いたんだけどねぇー。最近全然出会いなくてダメなんだよねー。俺めっちゃ優しいのに!。」 自分で言うか? 必死にアピールする浅葱。 隣で呆然としてしまう俺。 大学生相手にそこまてま自分をアピールをする姿は痛々しい以外の何者でもない。 もう、好きにやってくれよ、、、。 車の免許を持っていないという彼女に、今度ドライブへ行こうと誘う浅葱。 彼女もまんざらでもない様子で、浅葱の話に飛びついている。 「私、千葉からこっち来たんで、道内あんまり行ったことないから、是非今度連れてってください!。ドライブとか楽しそう!!」 浅葱にそう言う彼女。 これは次がある感じなのか? 浅葱と彼女の話を聞いていて、もしかすると、、とも思えてくる。 が、実際わからねぇけどな。 まぁ、振られないようにせいぜい頑張ってくれ。 目の前では、響が二人の会話を聞きながら嬉しそうな顔をしている。 まぁ、紹介した手前、うまくいけば、それに越したことはねぇか。 もう、2人を残して、店を出ても大丈夫だろう。 時間もある程度過ぎている。 「そろそろ行くか。」 目の前の響にそう告げる。 「え!もうおまえら帰っちゃうのか?」 浅葱が引き止めようとするが、もういいだろう。 彼女も、浅葱と打ち解けて、楽しそうにしている。 響もその雰囲気を察知したようで、 「真紀さん、私たちそろそろ帰るね。」 と、友達に告げる。 「うん。私は大丈夫だよー。彼氏さんも忙しい中、ありがとうございました!」 礼儀正しく、挨拶をする彼女は、きっといい子なんだろうという印象を受ける。 「浅葱と仲良くしてやって。おまえも、あんまりはしゃぎ過ぎんなよ。」 「わかってるよ!響ちゃん今日はありがとね!」 浅葱が響にお礼を言っている。 「じゃあ、浅葱、ごちそうさん。またな。」 もちろん、今日の会計は浅葱持ちだ。 「俺!?。まぁそーだよな。わかったよ。」 渋々納得する浅葱。 「行くぞ。」 響に声をかけ、一緒に店を出た。
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