introduction

2/3
前へ
/225ページ
次へ
金曜日の夜はどいつもこいつも浮ついてやがる。 駅の入り口で円柱形の柱に背をつけながら、伸びるに任せた茶色の前髪を少し払う。その下から馬鹿みたいに笑う大学生だの、もうクタクタって風態ながらも何処ホッとした表情のサラリーマンだの、すでに出来上がってる酔っ払いの集団だのを流し見る。 在来線に加えて地下鉄や新幹線の全列車が停車し、デパートや地下街なんかも併設された地方最大のターミナル駅は浮かれまくったヤツらで賑わっていた。熱に浮かされた夏の夜。 まあ、イヤホンを耳に突っ込みゲイアプリで男を漁る俺も似たようなもんだ。 ゲイアプリはゲイ同士のマッチングアプリだ。 アプリを開くと、名前、写真、ウケかタチか、恋人募集か、イチャつくのがいいか、ヤルのがいいのかなんかを書き込んだプロフィールがズラリと画面に並ぶ。 相手のプロフをタップして、ダイレクトメールを送り目的地に着いた事を伝えた。 ウォークマンのスイッチを入れると切ないピアノの音色にダニエル・パウターの柔らかい声が乗っかって、ガチャガチャした景色が音楽に包まれ途端に優しいモノに見える。 やはりBGMというのは大切だ。
/225ページ

最初のコメントを投稿しよう!

172人が本棚に入れています
本棚に追加