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平々凡々のわたし
道を歩けば振り返られる美女に、何度憧れたかわからない。
風を切り、ヒールを鳴らしながら颯爽と歩くような女性になりたくて、無理して9cmくらいのヒールのパンプスを買ったが、一回きりしか出番は無かった。
人が集まるようなトーク術も持っていないから、大学時代は気の合う友達としかいっしょにいなかったし、サークルだって、安全な女の子がいっぱいの管弦楽団だ。
大学にいた有名なイケメンに声をかける勇気もないから、みんなと一緒にガヤの一人としてチラッと姿を拝めたら、キャーキャー騒いでいるだけの大学生活。
本が好き、と言う理由だけで地元の書店の正社員になったものの、毎日、本の整理にレジ打ちと代わり映えのしない日々を送っている。
接客業だからと、黒く戻した髪の毛はいつの間にか無造作に伸び、手入れの行き届いてない毛が、少しずつ枝毛となって出てくる。
あーあ、と思いながらも、誰に見られる訳でもないからと、わざわざ美容院にお金をかける気も起きない。
今日も煌々と晴れた外の様子を見ながら、店舗に飾るポップ制作に勤しむ。
入ってきた新作の小説をパラパラめくりながら、
私にももっとイラストのセンスと文章のセンスがあれば、カリスマ店員とか言われてテレビの取材とか来てくれるかもしれないのにな、なんて考えながら、
至って普通のイラストをカリカリ描き続けた。
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