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「ごちそうさまでした♪」
お弁当を食べ終わった私は手を合わせると、チェック柄の巾着袋に空になったお弁当箱を入れた。
晴れの日は友達と4人で屋上に来てお昼を食べる事がすっかり定着してしまった。
「…えらく良い食いっぷりだったな」
そう言って笑うのは本木大成、小学生の時に同じ剣道教室に通っていた幼なじみ。
中学からは同じ学校、同じ剣道部員になり、今年は同じクラスにもなった。
「朝ごはんまともに食べられなかったから、お腹空いてたんだ」
私はそう言ってペロッと舌を出すと、ペットボトルのお茶を一口飲んだ。
「そういえば今朝、珍しく遅刻ギリギリに来てましたね」
思い出したようにそう言うのは鈴原美紀ちゃん。
2年連続同じクラスになった写真部員(あ、今は新聞部と合併したんだっけ?)の女の子。
「俺や大成はよくあるけどな♪」
彼は今年、大成と同じく私と同じクラスになった西川春樹くん。
クラスでも剣道部でも明るいムードメーカーってカンジ。
美紀ちゃんと西川くんは塾も私と同じで、ある『事件』をきっかけに仲良くなった。
…それまでも知らなかったワケじゃないけど、それほど親しくはなかったから…。
「今日寝坊しちゃってサ…焦っちゃった」
私はふぅ、とため息をつくと、今日の予定を思い出して幼なじみの方を見た。
「…あ、大成、今日も『コミック』に行くよね?」
「あぁ、もちろん。いつも『コミック』で晩メシ食ってんだし」
大成があっさりとそう答える。
『コミック』というのは大成の叔母さん(…じゃなくて親戚のお姉さんって言っても良いぐらい若い!)の愛華さんが経営している喫茶店だ。
小学生の頃から知ってる、料理上手で優しい私の憧れの人。
「漫画借りに行こうと思って…一緒に行っても良い?」
「何だよ改まって…そんな事言わなくても来れば良いじゃん?」
大成が怪訝そうな顔をする。
「…実は、ね…」
私が言うのを躊躇っていると、西川くんがガシッと大成の肩を掴んだ。
「オレも行こうと思ってるから♪」
西川くんがニカッと笑って答える。
「あ、すみません…私も行きたいって香織さんに言ったんです」
美紀ちゃんがあわてて西川くんに続く。
「…アタシ達が押し掛けるようになってから、大成が『コミック』を手伝うコトが多くなった、って聞いて…」
私がしどろもどろにそう答えると、大成はふぅ、とため息をついた。
「…別にお前等がどうとかじゃねぇよ。暇~な時に小遣い稼ぎしてるだけ…高校生になってから変わらず、いつも通りの事だよ」
大成はそう答えると、スマホを取り出して
「…じゃぁ愛華姉に『今日は4人で行く』って伝えとくよ」
と言ってLIMEの画面を開いた。
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