雪の夜

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「明日も学校があるしもう夜中だ、送っていくからもう帰ろ?このままじゃ二人共凍って死にそう」 「俺は女子じゃ無いんだから送ってくれなくても一人で帰るよ」 「うん、僕も寒いからそうしたいんだけどね、君継を一人にすると池に落ちるかもしれないし五階から飛び降りるかもしれないし変な奴に狙われたりするかもしれない」 「変な奴って八雲以上に変な奴はいないんじゃ無いか?」 「珍種なんだからもっと大事に扱ってくれ」 「考えとく」 手を引かれて起き上がると足の感覚はまだ戻っていなかった。 力が入らないとかまだマシなのに、足は目に見えてるのに、そこに無いのだから立てる訳ない。 倒れそうになって八雲にしがみ付くと細いのに力強い腕が支えてくれた。 「うう……本当に寒い、ああ、ついでだから言っとくけど「吸血鬼も寒いの?」って質問は禁止な」 「で?……寒いの?」 「寒いわ、悪いけど瞬間移動も出来ないし、飛べないし、にんにくも食べるよ」 「………うん」 「君継」 名前を呼ばれて隣を見上げると、今日何度目か、頭の上に積もった雪を払ってくれた。 「ありがと」 「君継はさ、ちょっといないくらい馬鹿だからわかってないと思うけど…」 「馬鹿じゃない」 「今日会いに来てくれて……本当に嬉しかった」 「八雲……」 軽い口調の中に混ぜ込んだ……多分これが本心。 昔じゃないから異端だとか化け物って言われて殺されたりはしないかもしれないけど、八雲も賭けに出ていたのだ。 もし間違った反応を見せていたら……八雲はもうここにはいなかったかもしれない。 酷い悲しみを胸に抱いて……きっと、静かに消えていた。 「寒…」 「うん……」 殺そうとしてごめん 心の中でもう一回謝っておいた。 八雲も寒いのだ、寒過ぎると死んだりもする。 どこも変わらない、何も変わらない。 何も変わらないのに、自分と違う物を決して受け入れない人がいるから、ひっそりと正体を隠さなければならない身の上なのだ。 何となくだが、同じような運命の道を歩いていたから出会ったような気がする。 「行こ」 「うん」 差し出された手を掴むと指が絡まる。 トストスと降り積もる雪は深さを増し、世界中の音を吸い込んでしまったみたいに静かだ。 ギュッ、ギュッと踏みしめる音と二人の話し声しかしない。 手も足ももう感覚が無い。寒くて、寒過ぎて体の片方が凍っているみたいだが半分は暖かいように感じる。八雲にくっついているせいだが実際は二人共凍えてる。 真っ直ぐに見えていた道に穴でも空いていたのか足を取られ八雲の胸に肩がぶつかった。 もう自然だった。 近い所で交わった視線は離れる事を許してくれず首を折った八雲の唇に吸い寄せられた。 そっと触れただけのキスは痺れたりはしなかったが……優しい高揚と「好きだ」と言う気持ちを連れてきた。
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