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雪合戦
「広斗!いつまで寝てんの!遅刻するわよ!」
怒鳴り声と同時に、ドスンと腹の上に重い物が乗って「うぐ」と体が丸まった。
母に起こされるなんて久しぶりだった。
あんまりにも寒くて頭まですっぽりと埋めていた頭をゴソゴソと布団から出すと外がやけに明るくて眩しい。
「あれ?今何時?」
「もう8時前よ、お母さんはどうなるかわかんないから先に行くわよ、戸締りお願いね」
「うん、いってらっしゃい」
バタバタと出て行ってしまった母をベッドの中から見送ろうと窓の外を見てギョッとした。
君継が崩壊させ、崩れたまま放置している家の塀が見えない。
門柱すら4分の1しか見えてない。
幼稚園の時にこの家に引っ越して来てからこんな事は一回も無い、昨日の夕方から降り始めた雪はあり得ないくらいのドカ雪となって辺りを白く覆っていた。
いつもの時間に目が覚めなかったのは町が異様に静かだからだ。道路にも積もった雪は車の交通を阻み歩く事さえ困難に見える。
母が作った雪を掻いた跡は平坦な雪面に盛り上がりができていて土竜の通り道みたいになっていた。
「お母さん!待って!駅まで送るよ!」
ベッドから飛び出してパジャマにしているトレーナーの上からコートを慌てて着ていると「学校へ行け」って母の声が聞こえて来た。
腰の高さを超える雪の中を歩くのはかなり酷に思えて、取り敢えず外に飛び出すと昨日の夜よりは寒くない。
母の作った道を追っていくと、働く世の大人達のパワーを思い知った。
各ご家庭から出来た土竜の通り道が合体して車道の端っこには普通に歩ける通路を作っていた。
そしてその道は多分駅まで続いてる。
きっと電車もバスもタクシーも動いてないと思われるが大人達はそれでも何とかして職場に行こうとしているのだ。凄い……っか大人になりたくないって思う。
まだ養ってもらってる子供の出番じゃないらしい。家に帰って学校へ行く用意をした。
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