喧騒から抜け出して

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私は昨日の記憶を手繰り寄せた。 「じゃあ博士!私、終電あるんで!」 昨日は、書類がなかなかまとまらなくて、気づいたら終電の時間だったんだ。 それで、慌てて部屋を出ようとしたら 「気を付けて!あっあと明日なんだけど……」 って博士に呼び止められて、 「えっ!?何ですか!?」 って部屋を覗いて……それで、 「いや……急ぎじゃないからいいや。明日また紹介するよ」 って博士が……。 ……紹介? 「紹介!」 糸が繋がったような感覚で、私は思わず彼を指さした。 「分かってもらえた?」 と、彼は呆れたように私の手をつかみ、そっと下に降ろした。 「いや……でも、それ」 そう言って私がワインボトルを見つめると、 「目を覚ましたら君から博士に伝えて。眠たい時は布団で寝ること。論文を読む時はワインボトルを傍におかないこと、って。そうじゃないと僕みたいにあらぬ容疑をかけられる人間が生まれることになる」 と彼は机の上を一瞥した。 あぁ、そういうことか。 机の上のシミがワインのものだと気づいて、ふっと体の力が抜けた。 「すみません……疑うようなことを言って」 深々頭を下げた後、私は彼の横をすり抜け 「博士、博士!起きてください」 と博士の体をゆすった。
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