喧騒から抜け出して

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「博士がイケメンだからとかテレビに出てたからとか、そんな理由で入ってきた子たちは皆すぐ辞めちゃうんですよね。博士の話についていけないみたいで」 「へー。和奏さんは?」 「えっ?」 「何で、ここで働こうと思ったんですか?」 そんなことを聞かれるとは予想外だった。 これまでここに入ってきた人たちが私にした質問と言えば 「博士って彼女いるんですか?もしかしてあなたが彼女ですか?」 とか 「博士が宮道家の子供って本当ですか?」 とかそんなものばかりだった。 私に興味を持った人なんて今までいなかったなぁ……。 いや、彼も結局は私と博士の関係性を探ろうとしているだけか。 じっと見つめても表情を変えない彼に向かって 「給料が良かったからですかね。博士、お金の相場には無頓着なようで」 と私もまた表情を変えずに伝えた。 まだ、本当のことは言うべきではない。 そう判断した。 彼は、そんな私に嫌悪感も、共感した様子も見せることもなく 「へー。なるほど」 とうなずいてみせた。 「大輔さんは?何で?」 自然に“和奏さん”と下の名前で呼んだ彼に動揺した姿を見せたくなくて、私もあえて彼を下の名前で呼んだ。 彼はそんなことを気にするそぶりもなく 「僕は、博士の研究に興味があって」 と答えた。
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