親友の存在

1/1
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

親友の存在

ーー20XX年  俺には親友がいた。  士官学校からの同期で、共に卒業した。そして、この国の軍へと入隊した。  俺達二人は別々の部隊に配属された。だが、切磋琢磨して二人とも同時期にそれぞれ部隊の隊長へ上り詰めた。  俺は陸軍。親友は空軍。かつて存在した自衛隊などひとかけらも残っていない、この国の軍で。  他の同期とは連絡もしなくなったが、親友とは連絡を取り続けた。それは損得感情などではなく、馬が合ったからだ。  親友が結婚をした時。俺が嫁を見つけた時。訓練で怪我をした時。昇格をした時。  互いが互いの事を自分に起きた出来事のように喜び、心配をした。  同時に競い合った。  どちらがよりそれぞれの地位を確立できるか。  結論から言えば親友の方が地位は高かった。階級も、友人の数も、酒の強さも、実力も。  だが、今となってはどうでもいい話だ。  なぜならば、【彼】はもうこの世には存在しないのだから。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!