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リーゼントが吹っ飛ばされたと同時に、その取り巻き達が襲いかかってきましたが、その人物はそれを華麗に避け、いつの間にか追い返してしまいました。近くに民家がない無人駅で本当に良かったと幸太郎は思っているでしょう。
金髪の彼女はふぅと一息着きます。先程の立ち回りといい、その姿すらかっこよく見えます。モデルのようにスラッとしていて、青い瞳がじっと幸太郎を見つめています。幸太郎はその人物に近づいて、カバンの中に入れていたタオルを手渡します。
「地九……いつもありがとな」
そういうと、地九と呼ばれた少女は微笑みます。
少女の名前は地九若菜と言います。年齢は幸太郎より二つ下で後輩です。
「でも、もうこんなことするなよ。危ないから」
「いいんです。"おれが"好きでやってることですし……先輩に恩返しがしたいんです」
タオルを受け取り、汗を拭く彼女はニコニコしながら答えます。幸太郎はでもなぁ、と言葉を濁します。
「あいつら、俺と同中のやつらだし……。きっと、俺が昔より変わったことが許せないんだと思う」
「おれは今の先輩も昔の先輩も好きですよ。おれにとってのヒーローです、この学ランをもらった時からずっと」
若菜は両手で学ランの前立てを大切そうに掴みます。それを見て幸太郎はまいったなぁ、と呟きます。
「女子を軽視するわけじゃないけどさ。でも、お前が怪我したら親御さんに申し訳ないっていうか……」
「先輩、優しいなあ」
若菜がそう言うと、幸太郎の顔がほのかに赤くなります。その時、ようやくバスが来たので、二人は停車したバスに乗車します。
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