だいにぼたん

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「やばいですってボス……」  離れた場所でボスリーゼントが誰かと通話しています。 「こないだより力強くなってますって……バイク音に混ぜたお経も効かないし、何より力は弱くてもポルターガイストで人を動かすのはあまりにも……」 「あの地縛霊まじで強すぎ……」 『かっちゃん……。なんでそんなダセェ格好してんだよ。オレ達のかっちゃんは、いつも自分の好きな格好して、ギラギラしてたじゃん』  白無垢に包まれた幸太郎を見て、不良たちは口を揃えて言います。久々に連絡が来た同級生と再会したら、無残な死体となって対面したなんて、彼らにとってはあまりにも残酷すぎました。  幸太郎は数日前の朝、不意に駅のホームから転落し、打ち所が悪かったのか意識を失い、そのまま電車に轢かれてしまいました。 無人駅なので監視カメラや目撃者もいません。そして、幸太郎だけではなく、近くには若菜の死体もあり、二人が実は恋人で無理心中したんだとか、どっちかが道連れにしたんだとか、憶測だけが飛び交いました。  その葬式が終わった翌日、不良たちが花束を持って駅に行くと、棺桶の中で見た幸太郎本人がいるではないですか。 「おっ、お前ら久々だな! 俺? 今から学校行くとこ」  なんと、幸太郎は自分が死んでいることに気付いていなかったのです。 不良たちは、幽霊になった彼が見えることや、話せることなどの当たり前の恐怖が吹っ飛び、彼を成仏させねばと立ち上がりました。 ある者は霊能力者に弟子入り、ある者は出家するなど、各々彼を成仏させるための準備を始めました。  ある一人が原付につけたスピーカーからお経を流しながら幸太郎のところに行くと、昔の彼に似た容姿の人物が立っていました。 その人物の出現と同日、幸太郎の指紋と若菜の爪の跡がついた第二ボタンが駅のプラットホームから見つかりました。 *** 「おや。ま〜〜た後ろの席に人影がいるような」  夏休み期間は学校では授業がないため、この時間に乗車する人は限られています。以前は近くの農業高校に通う生徒が二人乗っていましたが、数ヶ月前に不幸な事件があったので……。 「人がいないのについクセで停まっちゃうんだなぁ」  自分の行動に首を傾げた運転手は、再びバスを出発させました。
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