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 辿り着いたのはあいつの部屋だった。整頓されていて綺麗だ。 あいつは綺麗好きで、廊下にはホコリ一つ落ちていない。あいつの性格がこの部屋にも出ている。 「ここが何だってんだよ」 俺は口の中に大嫌いなアスパラを詰め込んだ気分になる。 「怒るんではない、少し冷静になれ」 みけ猫の両目が黄色く光った。 本棚から一冊のノートが出てきて、俺の手元に収まった。 「幽霊のお主が触れられるように呪文をかけておいたぞ」 みけ猫は言った。 思えば扉を潜る際もドアノブに触れられないから通り抜けてきたな。 表紙には日記と記されている。 「あいつの日記かよ……」 「いいから読んでみろ」 促されるがままに、俺は日記を開く。 整った字で俺のことが書かれている。 『大雅にきつく当たってしまった、強い後悔と嫌悪感 あの子のことを大切に思っているのに、押し潰されそうなストレスで酷い言葉が出てしまった』 「あいつ……」 「続きを読んでみろ」 みけ猫に勧められるがままに、俺はページをめくった。 口では言えない俺への思いが綴られている。 俺を立派にしたいことや、愛情があることを。他にも職場の悩みなども書かれていた。 読んでいて段々と記憶が晴れてきた。俺が中三の七月頃だったな、あいつは親父と二人きりの時に職場のことを打ち明けていたっけ。 その頃からだったな、あいつの態度がきつくなったのは。 単語漬けになってたからすっかり忘れてたけど。 「あいつも色々大変だったんだな……」 俺は言った。 あいつが働いていた理由は俺の学費のためだと聞いたことがあるが、俺が知らない所で苦労してたんだな。 読み続けてみると、俺に対する申し訳なさと職場の愚痴が延々と書いてある。 俺の受験のことや、職場でのストレスがあいつの心を蝕んでいったんだなというのがひしひしと伝わってくる。 あいつの心境を物語るように、綺麗な字が汚くなっていったからだ。 段々とあいつが可哀想に思えてきた。 次のページをめくると、乱れきっていて読むのに苦労した。 『大雅が……死んでしまった……』 精神を落ち着かせるために書いたんだろう、俺を失ってかなりショックだったことが目に見えて分かる。 『何故早く謝らなかったんだろう、大雅は辛かったはずなのに……私は母親失格だ。 大雅が死んだのは私の責任だ。ごめんなさい……大雅』 俺の心は針で刺さったように痛む。 俺は自分のことしか頭に無かったことが身に染みて分かったからだ。
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