01. 突然

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これは今を遡ること数10年前 僕、中村鴻一(なかむら こういち)が 山野田大学在学中に体験した 平凡でどこにでもあるような そんなある出会いの物語。 今でもテレビや雑誌などで "まい"と言う名前を耳にすると 胸が少し痛くなる。 当時体感したもどかしい気持ちや やり場のない切なさで 心が締めつけられる思いにかられてしまう、 そんな舞衣(まい)は僕の彼女…。 あの頃、 僕は大学のすぐ傍にある 四畳半一間の小さな下宿で共同生活をしていた。 おそらく当時の友達はおろか、 同じ下宿の住人や当時バンドのメンバーの一人で 下宿の「半住人」でもあった榊原亮二(さかきばら りょうじ)ですら 実際に舞衣の姿を見た事はないはずだ。 名前は聞いたことあるけどその姿は知らず… まるで謎の人物って感じで。 別に彼女の存在を内緒にして 隠すつもりだったわけではない。 むしろ何でも話したがる性格の僕からすれば 舞衣の存在を敢えて誰にも話さなかったのは 珍しい事だった。 でも僕の大学時代の思い出を語る時に 彼女の存在は欠かせないし 今更ながらこの場を借りて 長村(おさむら)舞衣(まい)の事を話しておこうと思う。
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