短編 咲桜・中三のクリスマス

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短編 咲桜・中三のクリスマス

side流夜 今年の咲桜にはクリスマスなんてなかった。 中学三年生。 高校受験を控えた咲桜に家庭教師を頼まれたのは今年の一月のこと。 幼馴染の笑満と頼と同じ学校に行きたい、でも今の自分の学力では到底無理だ。頼む。と言うことらしい。 笑満と頼は学年でも主席と次席の成績で、中二の夏には志望校を決めていた。 一応人生の先達(せんだつ)?として進路相談されていたけど、二人ともハナッから自分で行きたいところは決めていた。 それを知った咲桜は、色々考えた末、同じ志望校にしたらしい。 そして今日、クリスマスイブ。 咲桜はわき目もふらず勉強机にかじりついている。 咲桜が今まで勉強を怠けていた、とは一概に責められない。 母親がいない上に父親は不規則な仕事で、家事を一手に引き受けているから勉強に割ける時間が周りより少ないとこもあるだろう。 だが、頼と笑満は一言で言って天才肌だ。 一を聞いて十を知るタイプ。その二人と肩を並べるのは相当だ。 ――と言うかこいつ、今日がクリスマスだって気づいているのか?
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