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その森に少女は迷い込んだ。
深く、人気のない森に。
出られなくなった少女は泣き出した。
日が暮れても少女は泣き続けた。
あの鱗がある兄はずっと警戒をして少女を見ていたが、泣き続ける少女に見かねて仕方なく顔を出した。
「出口はこっち」
少年は少女の手を引いた。
しばらく歩くと光が見えてくる。
「その道を真っ直ぐ行けば村だ」
少年は少女の手を離すと森の奥へ戻ろうとした。
すると、
「待って!」
少女に呼び止められ、少年は振り返える。
「おおきに、ありがとう」
少女は笑顔で言った。
先程までの涙は残っていなかった。
怖がらない少女が不思議に思い、少年は問いかけた。
「僕が怖くないの?」
少女はこちらも不思議な顔をしてこう答えた。
「何が?」
「何がって……僕の身体を見て何か思わない?」
少女はじっと少年を見て、
「どこが怖いん?貴方も人じゃないの?」
そう言ったのだった。
少年は反論した。
「僕はこんな顔だから皆から嫌われてる。人じゃないよ……」
だが、思わぬ返事が返ってきた。
「人じゃないならどうして同じ形なん?なんで話せるん?」
少女の問いかけに少年は「えっと……」と首を傾げる。
「変やろ?だったら貴方も人やんな」
少年は今まで感じたことのない感情になった。
心が温かく感じたのだ。
少年ははじめて『人』だと言われたのだ。
「皆が貴方を嫌うのなら、私はずっと貴方の味方でいたげる!」
少女は少年に手を差しのべる。
少年は戸惑いながらも少女の手に自らの手を置いた。
「じゃ、じゃあ……僕は君が迷子にならないように案内……するよ」
少年は咄嗟に考えたことを口に出す。
「な……!?わ、私、迷子にはならへんよ!」
「えっ、だって迷子だったでしょ……?」
「そ、それは…く、暗くてわからんくなっただけ!」
「道は一つしかないんだけど……」
「ど、どれも同じに見えるんよ!」
少女の反論に少年はクスクスと笑いだす。
つられて少女も笑いだす。
「じゃあ、約束ってことで!」
少女は小指を立てて少年の前に出す。
「うん、約束だ」
少年は少女の小指に自分の小指を絡ませた。
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