【1】私は荊棘

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そして前方ドアに一斉に注目を集め、翠は更に小さくなった。 陰口が陰口じゃなくなり、それが聞き取れるくらいの声量に変わった時、誰かが『森のくまさん』の歌を歌い出した。 これは私と翠を比喩したものだ。 次第にそれは合唱となり、私たちは人目に晒される。 バカバカしい…。 剣と関わるといつもこれだ。 バカにされ、不快になる。 「戻ろう。」 私は怯える翠の手を取り、踵を返す。 G組なんか二度と来てやるものか! ピキッと青筋を浮かべ、ズンズンと怒り任せに歩き出した時だった。 すたこらさっさっさ〜の~さ〜♪♪♪ 背後から聴こえる歌。 けれど誰かが合図でもしたかのように、たった今この歌がピタッと止まった。 .
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