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「荊棘…!」
シーンと静まり返った廊下に響く私の名。
「い、荊棘さん…、終夜くんが…、」
それとは反対にボソボソと耳元で囁く声。
翠が私の手をツンツンと引っ張った。
意地でも振り向かない私。
「荊棘!」
すると剣の声がまたもや廊下に響いて、私は仕方なしに振り返った。
切れ長の黒々とした目。
私はその目を冷静に見つめ返す。
本当はいつものようにキッと睨み付けてやりたかったけれど、こっちは頼みを聞いてもらう方だけに立場が弱い。
「僕に何か用かな?」
その白々しい喋り方すら悪意に感じてしまう程に、大っ嫌いなコイツに頼み込むのが心底癪に障った。
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