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名家であるこの家は、大正時代に建てられたとても古い洋館だ。
この家の子として生まれてきた私は、古臭い考えの父によってあまり自由とは言えない生活を送っていた。
本当はやりたい事がないんじゃない。
何もやらせて貰えないからやりたい事が見付からないんだ。
私が外部の大学に拘る理由。
この家から出て行きたい理由。
それは全てこの家に生まれたからだ。
私は心の底から剣と離れたいのに、この家に居る限りそれは叶わない。
けれどそんな事は両親に口が裂けても言える筈もなく、まだ翠しか知らない私の秘密。
慎重に慎重に、誰にも知られずその日を迎えたい。
私はギシギシと鳴り響く古びた階段を下り、皆が居る客間に向かう。
その足取りは重く、ギーギーとゆっくり目に鳴く足音のせいで、私の心情がバレてしまわないかいつも不安になる。
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