【2】私と剣の遠い日

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基本剣は無表情。 美味しいを顔で表したりはしない。 もちろん私も無表情を貫いている。 「どう?このチョコレートケーキ美味しい?」 「はい。」 母の問いに剣はニコリ。 ようやく美味しいを顔で表現した。 「このケーキはどこの?」 私はといえば、このケーキの出処に興味があるあたり、つまりは遠回しに美味しいと言っているんだ。 「お隣の白川さんから頂いたのよ。 手作りなんですって。」 へえ。 私は心の中で感心する。 こんなクオリティの高いケーキを素人が作れるとは。 「そうそう白川さんと言えば…、娘の奏多ちゃん見付かったらしいわよ。」 「え?」 私はドキリとした。 ずっと行方不明だったお隣のお姉さん。 私も黙ったまま勝手に家を出たら、きっと父も母も心配するだろう。 .
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