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基本剣は無表情。
美味しいを顔で表したりはしない。
もちろん私も無表情を貫いている。
「どう?このチョコレートケーキ美味しい?」
「はい。」
母の問いに剣はニコリ。
ようやく美味しいを顔で表現した。
「このケーキはどこの?」
私はといえば、このケーキの出処に興味があるあたり、つまりは遠回しに美味しいと言っているんだ。
「お隣の白川さんから頂いたのよ。
手作りなんですって。」
へえ。
私は心の中で感心する。
こんなクオリティの高いケーキを素人が作れるとは。
「そうそう白川さんと言えば…、娘の奏多ちゃん見付かったらしいわよ。」
「え?」
私はドキリとした。
ずっと行方不明だったお隣のお姉さん。
私も黙ったまま勝手に家を出たら、きっと父も母も心配するだろう。
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