【2】私と剣の遠い日

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跡取りなら剣がなればいい。 私は知らない。 そう心で思った事を正直に伝えられたなら、そんな楽な事はない。 「では僕からご報告します。」 剣は性悪な自分を隠し、優等生のフリをする。 フリと言っても優等生には違いないのだけれど、癪に障るからただ私が認めたくないだけだ。 「現代文で一箇所ミスをしてしまい、96点。 他は満点でした。 総合1位です。」 「ほう、そうかそうか!」 父は嬉しそうに剣を見る。 その目を細めた事で深々と刻まれた皺が柔らかな線になり、愛情が優しく溢れ出る。 余程剣が可愛いんだろう。 その点私はどうだろう。 「私は総合9位でした。 家庭科は満点、その他は90点以上。 ただ…、英語は…、」 「またか…。」 するとたちまち落胆した父の声。 .
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