アオイロハイイロ

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ボタンのなくなった学ランはいつもより軽い。 いまいち晴れきれない曇り空。つぼみのままの桜。 卒業を迎えても、晴れがましさとか寂しさはあんまりなくて。 卒業証書と花束を両手に、どことなく冷めた気持ちで、俺は別れに涙する同級生の中に混ざっていた。 別に学校が嫌いだったわけでも、友人たちに愛着がないわけでもない。剣道部の仲間やクラスメイトは一緒にいて楽しかったし、いい思い出だってたくさんある。 ただそれを無くしたくないって強い気持ちが持てなくて、そんな冷めた自分に俺は軽い苛立ちすら抱いていた。 「な、中山ぁ。ひっ、しゃ、写真撮ろうや。最後にぃぃぃみんなで笑ってええぇぇっ」 「ああ、てか村田。なんて顔して泣いとるとや。鼻水、えらいことになっとるぞ」
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