ボーイミーツガールっぽいなにか

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数十分の距離を歩いて帰宅した僕は玄関を入ると寝室まで行き、ベッドに横たわり、電気自動車の充電器を口に”パチン”と嵌めて眠りにつく。この行為の説明は…疲れたんで後でいい?… 「こらイツキ、帰ったら”ただいま”って言わないとダメだろ」 女性の声がスリープモードの僕の薄い意識に響いた。 「ん」いや、疲れたんですって。休ませてよ。 すると、いきなり僕の充電ケーブルを引っこ抜き、大きな声で言った。「そんな子に育てた覚えはないぞ!さぁ、言うんだ!」 ケーブルを抜かれた為に強制起動させられた僕はぼんやりした状態で仕方なく言う。「う…ただいま」 すると満足したように頷いた女性。割とレンズの大き目な上フレームレスの眼鏡を掛け、若干ウェーブしてる黒髪は肩より少し長めで、”唯我独尊を体で表せ”と言われたらこれが最適解ではないかと思う程の立派な腕組み仁王立ち。目は切れ長で僕を真っ直ぐに見る。年齢は…10代と言われればそうかもしれない感じがするけど、30代と言われてもそれはそれであるのかもしれないと思う所謂年齢不詳な人物だ。そして「今日学校はどうだった?」と、いつもの質問を投げかけてくる。 「よく聞いてきますけど…そんなに気になります?」 「何を言っているんだ、君を作ったのは私だぞ。子供がどんな生活をしているのか気になって当然だろう」そんなことを言ってくる。 因みに、もうある程度分かった方もいるかもしれませんが、僕は目の前の女性、個体名 小平 可奈子から生み出されたアンドロイドです。一応言っておきますけどグーグルのOSじゃなくて自律思考ロボットですよ。”最近のAIはここまで進んだのか”と、お思いかもしれませんけど世間一般にAIと呼ばれているものは”こういう事を言われたり、されたりしたら大体の人はこうするよね”というデータを蓄積していき、そのパターンに沿ってリアクションするもので僕は幾つかそういうのも利用するけどそれ以外に自分で考えて行動することが出来る位複雑な処理を素早く出来る量子コンピュータという頭脳を持っている。 そもそもこれは世界でまだ完成の域に達していないものなのにそれを非常にコンパクトにして、更に身体まで作ってしまうという。天才なのは間違いない。僕の造形がショタいのとか、性格含めて趣味全開じゃねぇか!とか、思うところはあるけど。 とにかく、そんな僕が学校に通っているのだ。一応”アンドロイドは友達をつくれるのか”の社会実験という名目らしいけど、僕はアンドロイドだとバレてはいけないという。…アレかな、少しずつ人間と入れ替わって、気付いた時には人間は一人しか居ませんでしたっ!ちゃんちゃん。っていう終末世界的なギャグをするのかな? …あぁそうか、僕と友達を作れるのかが実験内容だから学校の様子を気にするんだ。 「そんなに変わったことはないですよ。いつものように授業して、いつものように…」はっ!思い出す。先程の不思議で神秘的な彼女との黄昏時の教室での約束… あの後、彼女と秘密を共有し合う仲間となった訳だけど、彼女からの「これから遊ぼ?」の誘いに僕は「電池が結構減ってるから今はゴメンなさい」と普通の人ならスマホかと勘違いされそうな言い方で謝った。正直、今から真っ直ぐ帰って何とか省エネモード入らないで済むくらいギリギリだった。 それを聞いた彼女は「…じゃあ、今日の夜中ならいい?」と言ってきた。僕は一瞬、何で?と思ったけど、よく考えれば彼女は元々夜行性だし夜の方が得意なのかもしれない。しかも夜なら充電も回復している筈 「いいですよ」と返事した僕は一つ忘れていた。 僕は目の前にいる癖っ毛で上フレーム無しの眼鏡を掛けた勝ち気な表情で腕を組んでいる僕の生みの親の女性、この人に許可を得ないで夜中に一人勝手に出られる訳がないっていう事に今更ながら気がついた。 …うーん、どうなんだろうか。シミュレーションしてみるが この人は何を基準で動いているのか不明だから不確定要素が多すぎて結果が毎回違って出力される。おずおずと切り出しても勢いで言っても同じランダムな結果が出てくる。 …これ以上考えても行ったり来たりするだけだっ! 「あ、あのぅ…今日の夜、ちょっと出掛けたいのですが…」 「ん?どうしたんだ、何かあるのか?」 「いえ、…友達と出掛ける約束しちゃったので」 「ほぉ、もう友達が出来たのか。スゴいな。私は自慢じゃないが高校三年間で二人しか友達出来なかったからな」 …本当に自慢にならない。 「良いぞ、行っても。しかし、悪いことはするんじゃないぞ警察の厄介になると私が面倒なんでな」 僕のようなアンドロイドを作れる技術や知能を持っているが、目の前の女性はなんとも自分勝手な事を言う。…けど、とりあえず「はーい」と返事した僕を満足そうに見ていたのだった。
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