おとうさんは幽霊

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環奈(かんな)。早く着替えないと遅刻するよ~」 ふわふわと私の顔の上に浮かぶお父さん。 『………行きたくない。』 「こらこら。ほら!立って!」 『もー!』 『おはよう環奈。パンとご飯、どっちにする?』 お母さんがテーブルに目玉焼きとベーコンとサラダをワンプレートにしたお皿を置いた。 『んー。今日はパン。』 『裕一さんは?』 「僕もパン。」 『パンだってー。』 『わかったわ。』 おかずのお皿は3枚。 スープも3つ。 『いただきます』 『いただきます』 「いただきます」 いつもの朝の食卓風景。 「杏奈のごはんはいつも美味しいなぁ!」 幽霊なんだから、食べれるわけないのに。 毎日それ言うよね。 冷めた目でお父さんを見てると 『環奈?裕一さんなんて?』 『……お母さんの料理はいつも美味しいって。』 『まぁ。嬉しい。』 お母さんは花が咲いたように パッと笑った。 「環奈!愛してるって伝えてくれ!」 『はぁ!?やだよ!それは自分で言ってよ!』 「出来ないから頼んでるんじゃないか!」 『環奈?何怒ってるの?』 あぁ!もう! 『ごちそうさま!行ってきます!』 『あら……せわしないわね。行ってらっしゃい。』 こちとら14歳で 思春期真っ最中だっつーの! 夫婦のイチャイチャに巻き込むな! 「環奈」 玄関でローファーを履いてると お父さんがふわふわ寄ってきた。 「車に気を付けるんだよ!」 『それ、あなたが言います?』 「経験したから言ってるんだよ! 事故死は痛いよー?骨は折れるし内臓破裂するし…」 『あーもう!うざい!ほんとうざい!』 「ほんとに、気を付けて。 行ってらっしゃい。環奈。」 『………………………。』 わたしの家族は普通じゃない。
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