第6話

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第6話

それから暫くして、事務所に舞い込んできた企画によって小野寺の言っていた意味を知ることになる。 「え?俺が?」 「そう。ここのジュエリー会社に、今年の創立20周年記念ジュエリーのCM出演をうちでお願いしたいって依頼されたんだよ。それで、お前にって」 「確か、10周年の時……」 「あぁ、俺がCM出演した」 俺が現役時代にCM出演したジュエリー会社が今度は瞬にと依頼の連絡が来た時、俺は何故か物凄く嬉しかった。 この老舗のジュエリー会社のCMに出演するということは一流と認められたようなもの。 当時、俺が出演した時も社長に物凄く喜ばれた記憶がある。 その会社は記念年にはその年のトップモデルを起用するらしく、今年は瞬を選んでくれた。 そして、企画書の内容と契約書を見せながら説明をしていく。 「今年のテーマは『秘密』だそうだ。どんなジュエリーかは撮影当日までは非公開らしく、俺たちも知らない。だから、瞬も当日先方の指示に従って撮影してくれ」 「……分かった」 「まぁ、緊張しないでいつも通りやれば大丈夫だよ」 「名波さんは緊張しなかったの?」 「そりゃしたさ。でも、俺の時はテーマが家族だったからエキストラの小学生や中学生の子供達と遊んでたら緊張も和らいだからなんとか大丈夫だった」 「……そ、そう、だったんだ」 「そういえば、あの時も緊張してた子いたなぁ。だから緊張しなくなるおまじないしてやったんだけど」 「おまじない……」 「ま、当日お前が緊張してたらおまじない教えてやるよ」 瞬にとってはこんな大役緊張しないわけがないだろうけど、せっかくならこいつの良さを最大限に引き出したい。 その為なら俺は出来るだけのことをしてやりたいと思った。 だけど、そんな俺にもどうすることも出来ない気がかりなことが。 そんな気がかりなことは一本の電話によって思わぬ方向へと俺を陥れていった。
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