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第7話
「関係あっただろ?大いに」
「そうですね」
例のCM撮影をあと数日後に控えたある日、小野寺から事務所に電話が掛かってきた。
それは、瞬の事で見せたいものがあるから指定した場所に来て欲しいと言う内容だった。
小野寺のことだからあまりいい事ではないと思った俺は、なるべく事務所には迷惑を掛けないようにと誰にも告げずに一人で待ち合わせ場所に行くこと。
指定されたホテルの一室に行くと、案の定小野寺は俺に脅しのような真似をしてきた。
「10年前、俺の誘いは頑なに断ってたくせにあの若い男には簡単に身体開くわけ?」
「だから、さっきから言ってるようにあれは契約上であって別にそういう関係ではないです」
「でもこれ見る限り気持ち良さそうにしてるじゃん」
そう吐き捨て小野寺が見せてきたのは、この前喫煙所で瞬が俺に抱きつきキスしてきた写真だった。
「これ……」
「あの日喫煙所を出たらこいつとすれ違ってさ、面白そうだから後ついて行ったんだよ。そしたらお前らがキスし始めたから思わずシャッター切った」
タイミングが悪かったという言い訳は通用しない。
俺がもっとしっかりしてたらこんな事にはならなかったわけだから。
「これが世に出たらあのCMも降ろされるし、モデル生命も危ないよな。あ、そういえばあのCM俺が撮影するんだよ」
「……知ってます。で、何が目的なんですか」
「10年前の誘いに乗ってくれたら処分してやる」
10年前小野寺に気に入られ、仕事で会う度に抱かせろと言われていた誘いを俺は頑なに断っていた。
それなのに、瞬には身体を許していることが気に入らないのだろう。
「承諾したら必ず処分してくれるんですよね」
「するよ、目の前でデータ消してやる」
別に俺がクビになっても構わない。だけど、瞬は守らないと……
そう思って「分かった」と承諾した。
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