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「でもこれだとアナタが損してるんじゃ…」
「仕方ないじゃん。警察沙汰にされたくないし」
「警察…」
「え~と……君、名前なんだっけ?」
「奏多です。この前も名乗ったと思うんですが…」
「記憶力悪くてすまん。奏多さんには申し訳ないけどこれで勘弁して」
指を真っ直ぐ伸ばした手を顔の前に移動。手刀を振り下ろす形で謝罪した。
「あの……何があったんですか?」
「ん? 俺も別の店での万引きに加担した事になっちゃったの」
「はい?」
「んじゃあね。迷惑かけてごめんよ」
「あ、あのっ…」
軽く手を振ってその場を立ち去る。会話を強制的に打ち切って歩き始めた。
「はぁ…」
溜め息しか出ない。クラスメートに屈服した事も、後輩に情けない姿を晒してしまった事実に対しても。更に悩みの種は誰にも相談出来ない悪質な物。いつ暴発するか分からない不発弾を抱えている気分だった。
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