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「は、はは。周防さんと違って、俺は脚が短いんで」
「そのようだ」
わ、そこは否定しないんだと驚く。
嫌味なのか素直なのか分からない。なんなんだこの男は。
どうやってこの時間をやり過ごそうか考えていると、周防の方から話し掛けてきた。
「ピヨ……入中は何センチある?」
「あ、俺の身長ですか? ええと、百七十センチくらいですかね」
「そうか。俺より十五センチ低いな」
「……はい」
「その髪と目の色は天然なのか?」
「え? あ、はい。そうです」
「純粋な日本人か?」
「そうです」
急に向かい合っての尋問が始まってビビる。なんだ、この会話。取り調べかよ。
目の前の周防には麻薬取締官か税関職員のような雰囲気があった。次はポケットの中身を尋ねられそうだ。脅されるより前に中身を全部、出した方がいいのだろうか?
「綺麗だな。アイルランドかスコットランドの少年みたいだ」
「へ?」
「どちらも綺麗な色をしているな、と言っている」
「あ、はい」
周防は真っすぐな黒髪で瞳も漆黒だ。腹の中身もブラックそうだが、それは黙っておいた。反対に陽向の髪と瞳は赤味の入った薄茶色をしている。確かに日本人には珍しい色なのかもしれない。瞳が大きく、髪がクルクルの癖毛なので、子どもの頃はよくハーフに間違えられた。
「ダンスが上手くて驚いた。昔からやっていたのか?」
ダンス?
プロジェクトの打ち上げで踊ったことはない。そもそも周防と同じプロジェクトになったことはないのだ。コンサルタントはユニットで動くため、一度、仕事で親しくなった相手でも会わない時は何ヶ月も会わない。
ピヨたん音頭のことを言っているのだと気づいて、陽向は慌てて頷いた。
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