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「中に入るぞ」
「はい」
今日はホテルの第一回目のプレオープン日で、EKのプロジェクトメンバーもそれぞれ招待されていた。
タワーの低層階にはバンケットルームや宴会施設があり、高層階にはフロントとロビー、レストランがあった。最上階にはフィットネスやスパが併設され、窓から東京の街全てが見渡せるらしい。昼間だとランニングマシンで走りながら富士山を眺められると聞いて一度、行ってみたいと思っていた。
「豪華だなあ……」
周防と泊まったあの雨の日のホテルも綺麗だったが、ここはそれに輪を掛けてラグジュアリーな雰囲気があった。引き算の美学だろうか。余計なものは一つも置いていないのに簡素に見えない。照明一つをとってもなぜそこにあるのか、きちんと意味のある配置がなされている。
エレベーターを降りてロビーのフロアに出る。縦長に高く設置された窓から外の景色が見えた。ロビーが空に浮いているようで本当に綺麗だ。青い空が透き通るように眩しい。
手続きを済ませて部屋に案内される。一度、ベッドになだれ込むとそれだけで終わりそうで怖いので、荷物を置いてすぐに外へ出た。とりあえず最上階のフィットネスに向かう。
「こんなホテルに無料で泊まれるなんて……やっぱり仕事頑張ってよかったな」
「ホテルの評価は書かないといけないぞ。そのためのプレオープンだからな」
「もちろん、それくらいはやります」
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