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どんな企業でも必ず業績悪化という病気に罹る。放っておけば死、つまり経営破綻する。簡単な風邪ぐらいなら社医(自社の専門家)で治せるが、大掛かりなオペが必要な病気の場合、自社の専門家では賄えきれなくなる。そんな時、必要とされるのがプロのコンサルタントなのだ。
決して、高いスーツを着て、ハートマンのアタッシュケースを持ち、妙なカタカナ語で煙に巻きながら、ガラス張りの会議室で机上の空論を助言しているわけではない。仕事の内容は土着的で泥臭く、特に陽向と同じアソシエイトの仕事は、縁の下で業務を続ける張り込み中の刑事に近いものがあった。
陽向はこれまで、ファストフードの店員に扮したり、家電メーカーの工場の作業員になったり、大手建設会社の建設現場に足を踏み入れたこともあった。あるシューズメーカーでは一つの工場の労働生産率と稼働率が悪く、原因を探るため入ったところ、工場の中に変な段差があり、作業員が皆そこで躓くため、生産率が落ちていることが分かった。
丁寧なヒアリングと面接調査、データ収集と分析、課題解決方の策定、最終提案と実行支援――。この流れの中でディレクターとPM、アソシエイトが協力しながら仕事を進めている。全てはクライアントの幸せのためだ。
段差の案件は冗談のような話だが、どんな些細な問題に対しても根気強く調査分析を行い、真の問題を特定し、そこから答えを見つけるのがコンサルタントの仕事だった。
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