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「あ、うちの社員証だ。実地調査するとかって本当なんですね。驚いたなあ」
「弊社のマネージャークラスはハイランドさんの社内推進役とともに仕事をしますが、俺たちアソシエイトはハイランドさんのオフィスだけではなく、そのユーザーがいる現場に行けと上から命令されているので」
「え? 営業に出るの?」
「そうです。ですので、どうぞよろしくお願いします」
「マジかあ。俺につくんすよね? 参ったなぁ……」
菅は驚きながら頭を掻く仕草をした。訊くと陽向と同じ入社三年目のニ十五歳で、笑顔と営業成績のいい、明るく鷹揚な男だった。すぐに親しくなり、社内の色々なことを陽向に教えてくれた。
「うちはメジャーセブンの中でも、貸しビル業の収益が最下位なんすよ。ちゃんと営業してるはずなんですけど、なぜかいいテナントに入ってもらえなくて。他の事業の営業ノウハウがまるで利かないっていうか、とにかく人気ないんすよね」
「そのようですね。お願いしていた資料を出して頂いても構いませんか?」
「あ、もちろんです。それと、敬語じゃなくてもいいっすよ。俺、ヒラだし」
陽向がお互い砕けた感じでいきましょうか? と言うと、菅は人懐っこい顔で笑った。
「そのネクタイ可愛いっすね」
「そうかな?」
「凄く似合ってます。新人営業マンみたいっすよ」
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