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衒いのないストレートな言葉に男気が見えて、やっぱりいい上司だなと思った。
なんだろう。
急激にやる気と勇気が湧いてきた。
周防に認められる仕事がしたい。アソシエイトとしてPMを支えるような立派なバリューを出したい。なんとしても、この男に褒められたいと思った。
やるぞやるぞと気合いを入れていると、周防から頭をなでなでされた。
――なんか癒されるな……。
多分、検品終了の合図なのだろうが、心がじわりと温かくなった。嬉しくて、飼い主に褒められた犬みたいにもっと撫でてと頭を突き出しそうになる。
やっぱ、疲れてんのかな、俺……。
最近、人に優しくされていない。最後に優しくされたのはEKに入社が決まった時、祖母から「ひなちゃんえらい」と褒められた時だ。その祖母も今はもうこの世にいない。ずいぶん長い間、気を張って頑張ってきたんだなと思って、感慨深い気持ちになる。
目の前の男は相変わらず無表情だったが、周防がそれほど悪い人間ではないように思えてきた。
――本当は、優しくて面倒見がいい、ばあちゃんみたいな人なのかもしれない。
その幻想は数日後、脆くも崩れ去ることになる。
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