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「ん……」
視界が揺れる。目の前がぼんやりしているのが分かった。
頭が痛い。
自分の周りを青い服を着た人々が囲んでいる。それぞれ別の動きをしていて、忙しなく働いている様子が見えた。
扇風機が三台、自分の方に向いている。腕と脚に点滴のチューブが繋がり、全身がびしょびしょの布で覆われ、保冷剤のようなもので体のあちこちを冷やされていた。点滴まで保冷剤で冷やされている。
なんだこれ。
冷やし点滴はじめました、みたいだな。
夢だろうか?
熱中症の治療がこんなにもアナログなものだとは知らず、陽向は笑いが込み上げてきた。
「……意識が混濁してますね」
「バイタルは安定してるが、急性腎障害が心配だな。念のために透析が行えるようにICUに連絡しておいてくれ」
「分かりました」
青い服の背中を見ると白抜きでエマージェンシーの文字が見えた。どうやら自分はまだ死んでないらしい。ここは病院のERだろうか? 生きているのが分かって安堵する。
「それにしてもあの着ぐるみ……最悪でしたね。脱がしきれなくて整形外科に電動ノコギリ借りたの初めてですよ。それも三人掛かりで……」
「処置室でアヒルの解体ショーしたのも初めてですけどね」
若い医師二人が楽しそうに笑っている。
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