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【11】Long kiss ××× Sleep tight
人を好きだと認識すると当たり前のことができなくなる。
陽向はそれを知った。
今まで普通にしていたことができない。
周防と並んで歩くのも、目を合わせるのも、普通に話すのも、恥ずかしくてできない。声を聞いているだけでドキドキする。EKに戻らなければいけないのに、体が上手く動かなかった。
「そういえば……ピ……入中は、私服なんだな……」
「あ……はい。し、私服……です」
なんなんだ、この会話。
棒読みすぎるだろ。気まずいにもほどがある。
陽向もおかしかったが、周防も充分おかしかった。
これまでの普通が分からない。周防がいる右側が熱かった。
「あの、EKに戻って話があると……」
「それは後にしよう。今日はもう仕事ができない。この状態では無理だ」
「そ、そうですね」
コンサルには明確な勤務時間はなく、裁量労働制なのでバリューさえ出せれば、後は公園のベンチで寝ていても構わない。周防の報告は気になるが、陽向も、もうまともに仕事ができそうになかった。
「俺の部屋でいいか?」
「え?」
「変な意味ではなくて、この後、行くところだ」
「……それもちょっと」
「変か?」
「はい……」
なんだろう。話せば話すほどおかしくなる。
「ああ、そうだ。ICレコーダーの記録を保存して報告書を書こう。そのために一度、部屋に戻ろう。バックアップは必要だからな」
「……分かりました」
ぎこちない会話が続く。正直、部屋までどうやって帰ったのか分からなかった。
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