赤色の彼

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赤色の彼

 私の彼氏はカメレオン。  私と彼が初めて会ったのは大学の新歓コンパだった。こういう場に慣れていなくて逃げ場を探していたときに彼を見つけた。彼は私から見て誰よりも目立っていた。だってあんなにも赤かったのだから。不思議そうに見ていると、彼はすくっと立ち上がった。そのままフラフラとトイレの方へと向かっていった。私はまだ話したこともない彼が心配になって、酒をあおる先輩たちの間を縫ってトイレに向かった。  私がトイレの前に到着した瞬間に彼がトイレから出てきた。赤の他人だった私たちは一瞬見つめ合って、初めて言葉を交わした。 「・・・大丈夫?」 「うん、大丈夫・・・」  彼はぎこちなくそう答えて、二人の間には何とも言い表し難い気まずさを含む時間が流れた。どちらからともなく席に戻ろうとしたときに、私の目は彼の変化を見逃さなかった。赤かった彼の体から徐々に赤みが消えていき、最終的には普通の肌の色に戻っていた。  これが彼がカメレオンだと初めて思ったときだ。
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