青色の彼

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青色の彼

 新歓コンパから私と彼は話すようになった。話してみれば履修している授業がほとんど同じで、趣味も近かった。私たちは当然のように惹かれあった。  私たちが交際を始めて一ヶ月ほどが経った。デートにも行くし、喧嘩もほとんどしない。自分で言うのもなんだが、お似合いのカップルだったと思う。しかし、不満がないわけでもなかった。彼はなかなか私に手を出してくれないのだ。デートに行っていい雰囲気になっても何もしない。彼も自分で未熟な青二才だとよく言っていた。進展がないとはいえ、彼といると楽しかったし幸せだった。  そんなある日のデート中。彼の変化に気がついた。彼の全体が青いのだ。前は赤だったのに、次は青。もしかしたらすごく体調が悪いのかもしれない。 「・・・大丈夫?」 「えっ、うん、だ、大丈夫」  彼の不自然な返事に私は首を傾げた。しかし体調が悪いわけではないようだ。とりあえず安心した私は目的地まで行こうと促した。  やたらキスシーンが多い映画を観たあと私は感づいた。彼は今日、一線を越えるつもりなのだと。私はドキドキしながら彼からのサインを待った。  夕食を食べ終え、暗くなった街を歩きながら彼と談笑する。お酒の入った私たちはフワフワとした足取りでどこに行くでもなく歩いた。周りにやけに派手なネオンが増えてきたとき彼が突然立ち止まった。 「・・・なあ、あ、あのさ、・・・行かない?」  眩しいネオンの看板が立つ、入口が豪華なつくりの建物を彼は目で示した。下手だな、と思いながら彼の口車に乗ってやろうと思った。 「・・・うん、いいよ」  私たちはその夜、一線を越えた。初めてだったのだが、彼の優しい囁きを聞いていれば自然と恐怖は遠のいた。  枕に頭を預け、彼の温もりを右側に感じながら彼の頭を撫でた。そのとき、またも彼の変化を目にした。青かった体が元の肌の色に戻っていた。私は幸せに埋もれながら眠りについた。  これが彼がカメレオンだと確信したときだ。
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