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冷蔵庫から出して、そのまま電子レンジにインすると次のメッセージ着の振動があった。
さとり「颯くん、タブレット見てくれた?」
タブレットって…居間のアレか?
――ごめん、見てない。どうしたの?
今度は😢というスタンプが付いて、明らかにがっかりしてるのは解ったけど。
さとり「ちゃんと見てね。ごめん。俺そろそろ寝る」
――解った。直ぐ見るよ。お休みサトリ君。またね。
俺のメッセージに既読が付いた後はもう新しいメッセージは来なかったから、多分ベッドに入っていたんだろう。
居間に筍御飯の茶碗と筍餃子の皿とビールとグラス運んで。
スタンドに立ててるタブレットを操作しやすいように、ソファーにもたれかかるようにして床に座ってから、ビールの缶のプルトップ開けてグラスに注ぐ。
カンパーイ。って独りでグラス挙げてから、泡に口付けて飲みながらタブレット弄ったら。
トップ画面に『1』『2』『3』『4』って名前のついたアイコンが並んでた。
取り敢えず『1』からなんだろう、って思ってそれに触れる。
画像が切り替わって、
サトリ君がこっち向いて手を挙げてる画像の真ん中に白く▶マークがついてたから。どうやら動画だと気づいて。全画面に切り替えてから再生マークを押したら、画像の中のサトリ君が動き始めた。
『映ってるかな…――颯くーん!お疲れ様。久々に来ちゃったよ~』
こっちに両手を振ってくれるサトリ君の声が小さい気がして思わずタブレットの縁の音量ボタンをガンガン上げる。
『きょうはー。知り合いから届いた筍を使って…。筍ごはんと、筍餃子を作ります!』
ああ、コレ作った料理動画なのね?
カウンター見ると、HD画質で撮影できる上限の30分使ってるということは。2時間は此処にサトリ君の動画が入ってるってことだ。
『これねー。皮付きで5本も届いたのを、家で茹でてきたんだよ?――初めてだったけど俺凄くない?』
答えも返らない静かなキッチン。
俺が見るの解ってるサトリ君は、カメラに向かって何時もより沢山話すようにしてくれてるのだと解る。
ヤバいよこの動画…。
一瞬も見逃せないから集中しすぎて御留守になった手はグラスにも箸にも触れられない。
『はい。じゃあねぇ…まずは、筍御飯を作ります!――材料は…』
画面の中のサトリ君はフレームアウトしたところにスマートフォンを置いてるようで、そこに手を伸ばして視線をやってから。
『筍1本!米2カップ!出汁480㏄!油揚げ1枚…以上!』
どかどか画面手前に材料置かれて、サトリ君の姿が隠れた。
「えっ!?――見えないよサトリ君!」
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