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画面に話しかけながらまた床に座り込んで一時停止を解除すると。フレームの中のサトリ君が材料の説明を始めた。
『餃子の皮20枚。竹の子が…100グラム。豚ひき肉150グラム。小松菜1把、ショウガみじん切りひとかけ。味噌大匙1。酒大匙1。胡麻油大匙1です』
サトリ君の声聞きながら、餃子がほかほかにあったまってる皿を眺める。
乗せるなら他にも白いシンプルな物があったのに。サトリ君が選んだのはネイビーブルーの皿で。そのうえで餃子たちが風車の羽根を並べるように丁寧に円を描いている。
きつね色より少し濃いくらいの焼き色がやっぱり綺麗で青い皿と凄く馴染んでる気がして。サトリ君の美的センスがこんなところで発揮されてるのが解る。
綺麗に盛られた形を崩すのはもったいないけれど。今度こそ熱いうちに、って思って、箸で一つ摘まんで頬張ったら、
「あっ…っつ!!」
皮に歯を立てた途端、中から小籠包か、ってくらい肉汁があふれてきたから慌てて顔上げてはふはふ、と熱を逃がした。
「~~~~~っっ…!!!」
肉汁の余りの美味さに反応して、舌の下が痛くなるくらいの勢いで唾液を供給しはじめてるのが解る。
もぐもぐ、もぐもぐ…としてようやく飲み込んでから、画面のサトリ君に話しかけた。
「サトリ君コレ凄い!美味い!」
当然答えは返ってこないけど。
次の餃子に箸を伸ばしてひと口で頬張って。熱いのまた思い出してはふはふを繰り返す。
そして画面の中のサトリ君は着々とこの餃子を完成させるべく奮闘してる。
『――ボウルに材料全部入れて…捏ねまーす』
腕まくりした手を突っ込んで、凄い勢いで掻きまわしたり、種を持ち上げてボウルに叩き落したりしてから漸く納得いったのか。
『じゃあ今から、皮に包んでいきまーす』
一枚摘まみ上げた餃子の皮と、スプーンをカメラに近づけて見せたサトリ君は。ボウルの中の餡を『これくらいかなぁ…』なんて呟きながら掬って、皮に載せた。
一旦スプーン置いて、餡を包むように皮を半分に畳んでから。何事かまだ両手の指先使って餃子を弄っていたけど。
『襞って…つけるの難しいよね…――あっ!』
画面の中のサトリ君が叫んだから何事かと思ったら。
『うーん…中身飛び出しちゃった…。一個目失敗』
がっかりしながらカメラ前に見せてくれた餃子は、半分だけ襞が付いて、残りの半分の弧のところから餡が溢れ出てた。
「ドンマイサトリ君!口に入れて美味ければいいんだよ」
ホントコレ美味いよ、と画面に向かって応援する。
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