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『7月7日。晴れ?』(颯×アサキ)
「さぁさーのぉーはぁ、さーらさら~♪」
なんて。ご機嫌なアイダちゃんの歌声が聞こえてきた。
「ふーんふーんーふーん(←?)」
次のセンテンスを、歌詞解らないのかハミングで誤魔化してる。
「おー星さーま、きーらきらぁ」
素麺に載せる茄子のシギ焼きの合わせ味噌を左腕に抱えたボウルで練りながらリビングに行ったら。
フローリングに座り込んで笹飾り用の紙の鎖とか、金色の折り紙で星をつくったりしてる
アイダちゃんが。俺を見上げてきた。
「あ!颯ちゃん!!見てみて?」
「凄いなあ…それ全部つける気なの、アイダちゃん」
「これだけじゃないよ?お願いごとの短冊も書かないと…」
アイダちゃんは何処から拾ってきたのか、ベランダに、パンダが食べるのかってくらい葉が生い茂った笹をいつの間にか立てかけていて。
後で一緒に短冊や飾りをつけようって約束してた。
――俺ね?家出るまで毎年家族で笹飾り作ってたからさ。
ずーっとやってなかったのが、淋しかったから。颯ちゃんと一緒にできて嬉しい。なんて。可愛い事言ってくれちゃう。
「やっぱりアイダちゃんトコ仲いいよなぁ…。七夕なんて俺小学校の行事以来笹飾り作ったことないよ」
アイダちゃんの家はこういう行事ごとが大好きそうだよな、って。何時も面白エピソードに事欠かないアイダ家の面々の顔を思い浮かべた。
「んふふ。――ところで颯ちゃん願い事決めた?」
今度は銀色の折り紙で星を作りながら、アイダちゃんが顔をあげて訊ねてくる。
「沢山ありすぎて一つに決められない」
「えー?颯ちゃんの、欲張り~」
俺はね?今年はひとつだけにするよ?なんて言うアイダちゃんに。
「何なに?教えてよ」
「ええ!?ヤダよ…。内緒…って――さ。できた!」
銀色のぴかぴかの星を俺に見せてから。
床に散らばってた笹飾り達を箱の中に詰めたアイダちゃんは。
「ご飯食べたら、一緒に飾ろうね?」
お腹すいた!ってごろー、ってフローリングに寝転がるアイダちゃんに。
「ハイハイ。茄子焼いたらすぐだから。あと
10分くらい待っててね?」
(了)
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