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『28時』(颯×サトリ)
明け方。
目覚めたら。
今まで見ていた筈の幸せな夢が、指先から零れて遠くなりそうで、必死に記憶を辿ってた。
「――そー君?」
「あ…サトリ君?」
気がついたら目の前の君が。薄闇の中で心配そうに俺のこと見つめてる。
「寝てるとき穏やかだったのに起きたら不機嫌そう」
「夢を…見てたんだ」
「どんな?」
「サトリ君と一緒に居た夢。――だから、こんなに必死に思い出そうとしてる」
サトリ君はちょっとはにかむように微笑んで。
「有難う」
俺の腕を自分の腰に回して、胸に寄り添ってきた。
柔らかくて。温かい。肌。
穏やかな呼吸を感じて。また俺は眠りの緩やかな坂道を降りていく。
「そー君――寝る直前の感覚って。凄く夢に影響するんだって」
だからまた。次の夢でも俺と逢ってね?
呟く君が愛しくて。
必ず逢いに行くよ。って。遠のく意識の中で君を抱きしめた。
(了)
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