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日暮れが近づくと、園は重い脚を引きずり、勝手口に戻った。
「戻りました」
引き戸を開くと、静と向かい合って座り、何食わぬ顔で夕餉をかきこむ静がいた。
「お、お静様……」
麦飯や汁物を頬張った静が園に目で挨拶し、茶碗を志乃に突き出した。
志乃が優しい声を出した。
「お代わりでございますね。明日は、栗のご飯も炊きましょうね。当家は食べるものも豊富にございますよ」
園が腰を抜かして上がりかまちに腰かけると、静にお代わりを出しながら志乃が澄まして言った。
「柄の悪い若様はもうよい。それよりも良い縁を見つけました」
勝手口の外を通りかかった父親の喜兵衛がひょっこりと顔を出した。「お園。お国家老からお静様を頼まれ、末永く当家にお住まいいただくことになった。今後は姉とも思い、お慕い申し上げよ」
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