29. わだかまりの解消に向けて

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 これまで、父親らしいことなんてなにひとつしてこなかった人間が、今になって目の前に現れ、何を話すでもないままでは不審に思って当然だ。  俺にも父親が何を思って会おうとしているのかわからない。 「金の振り込みをやめたいならさっさとそう言えばいいのに」 「そういう話なのか?」 「わかんないけど」  もしそういう話なら、それこそ棚橋さんを通してでもいいんじゃないか。これまですべてのことを棚橋さんを通してやってきたのだ。そこだけ律儀に会う必要などあるのだろうか。だとしたら他に理由はなんなのだろう。 「とりあえず、会って話してみたらどうだ。お前から話を切り出してみるとか」 「話したいことなんてない」 「文句だっていいじゃないか。さっき言ったことをぶつけてみればいい。お前が俺にいてほしいなら、側にいてやる。それで話ができるならそうすればいい」  話さないことにはなにも解決しない。わからないままこうして苦痛に感じる時間を重ねていても仕方がないだろう。それで傷つくことになるかもしれないが、そうしてでも前に進まなければ意味がない。
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