29. わだかまりの解消に向けて

3/9
前へ
/317ページ
次へ
 そうして、春名と共に三枝義紀と会うことになった。  芸能ニュースでも、無言を突き通した三枝義紀のニュースは他の話題に飲み込まれ一応の落ち着きを見せているそうだ。  世間とはそういうものだ。新しい話題にどんどんおしやられ流されていく。それでいいのだと、今は思う。 「はじめまして。月本雫と言います」 「・・・・・・三枝義紀だ」  はじめて目の当たりにする三枝義紀は、これが芸能人のオーラなのだろうか威圧感がすごかった。物凄い存在感。顔つきは確かに春名とにているのに、全く笑わないその表情が怖くてたまらない。春名のにこやかさは母親譲りなのだろうか。 「ネットで騒がれてたから知ってるかもしれないけど、俺雫と付き合ってる。別に報告する義理はないけど、嘘はつきたくないから」  春名が付け加えるようにそう言った。  そういう情報をこの人は知っているのだろうか。  それにしても、重苦しい空気だ。これは確かに春名も息がつまる。苦痛な時間でしかないのだろう。 「あの、どうして突然春名と会おうと思われたんですか。なにか話したいことがあるのかと春名も気になってるようなので」  この場合は、部外者である俺が不躾にも切り込んでいけばなにか空気が変わるだろうかと切り出してみた。三枝義紀の視線が鋭く俺に向けられる。
/317ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2349人が本棚に入れています
本棚に追加