29. わだかまりの解消に向けて

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 今さら。本当にそうかもしれない。でも、せっかく向き合おうとしているんだ。歩み寄ることは簡単にはできなくても少しずつ話すことから始めてみるのはいいかもしれない。 「二人には圧倒的に会話が足りないと思います。文句でもなんでも春名はぶつけていいと思うし、あなたにはそれを聞く義務がある。思っていることは互いに全部ぶつけてしまえばいい」 「尚紀・・・・・・君のことを教えてくれないか」  それから、二人はようやく話始めた。辿々しい雰囲気も少しずつ和らぎ、穏やかとは言えないが、一歩関係を進められたような気がする。  三枝さんにも父親としての自覚が少しずつ出てくればいい。 「会見を開こうと思う。事実を話、これから真摯に向き合っていくことを世間にも伝えたいと思っている」 「せっかくほとぼり冷めたのにですか」 「尚紀と会おうと思ったのは、この事を公表し、ちゃんと俺の息子としての人生を歩んでくれないかと頼むつもりだった。断られても仕方ないとも思っていたが。でも、その前にかぎつかれてしまってこんなことになってしまって、申し訳ないと思っている」  簡単にわかりあうことなんてできない。わだかまりはあるし、憤りも感じるだろう。でもそうしてぶつかっていけば、新しい関係も築けるのかもしれない。
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