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ごく一般的な親子関係とは違ったとしても。この二人だけの関係が。
「今日はありがとうございました」
「いや。こちらこそ、同席してくれてありがとう。君のお陰でちゃんと話ができた」
「いえ、差し出がましいことをすみません」
三枝さんの仕事の関係で切り上げることになった。
「君の名前を聞いたときは、驚いた」
「・・・・・・名前?」
「尚紀。・・・・・・俺がつけた名前だ」
「え・・・・・・」
ずっと俯いていた春名の顔が上がった。驚きに目を丸くさせる。
「まだお腹にいた頃、名前の話になった。どんな名前がいいかと聞かれ、半日悩みに悩んだ結果、尚紀と答えた。自分の名前の一文字を入れたいと思った。でもその後俺は、離れてしまって、名前なんてきっと変えられてしまっただろうと思った。でも、つけてくれたんだな」
「母さんが、つけてくれたんだと思ってた。じいちゃんも、ばあちゃんも、母さんがつけたっていってたから。生まれる前から決めてたんだって」
「そうか」
三枝さんがつけた名前を春名につけた。それは、きっとお母さんが三枝さんのことを最後まで愛していた証だろう。そして、春名に残した、春名が愛されていたという証だ。春名のために、春名を思ってつけられた名前。両親が揃って考えてくれた唯一のプレゼントだったのだ。
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