51人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
──ぐっすり寝てしまった。
「あーやちゃん。起きて」
甘い素敵ボイスにぼんやりと目を覚ます。ああ、このイケボに毎朝起こされたい。まあ、起きるのいつも昼だけど。
「……んん、氷室しゃん、おは」
「うわー、寝起きブッサイクー」
「ブ、ブサイク!?!?」
一気に目が覚めて、慌てて顔を手で隠した。
「うっそー。可愛いよ」
氷室さんは笑って、わしゃわしゃと私の頭を撫でる。不意打ちだ。
ほっぺたがかあっと熱くなった。うう、しばらくは顔から手を離せんぞ、困った。
「……そ、それよりもう着いたんですか?」
顔を隠したまま、モゴモゴ尋ねる。確か高速の途中のサービスエリアで、トイレタイムが設けられていた気がしたのに。
「うん。俺らがぐっすり寝てる間に着いちゃった。ほら、見て。海」
氷室さんが指さす窓の外に視線をやれば、少し先に、白い白い砂浜と、眩しい太陽を反射してキラキラと光る水面が見えた。
「うわあっ! 海! 太陽! ビーチ!」
「なにそれ、急に単語しか言えん病気?」
「だって! 夏!」
「あはは。俺らも降りよ。もうみんなバス降りて待ってるから」
そう言ってまた頭を撫でるから、私の顔もまた夏の日照りだ。困るけど嬉しいけど困る。
最初のコメントを投稿しよう!