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──ぐっすり寝てしまった。 「あーやちゃん。起きて」 甘い素敵ボイスにぼんやりと目を覚ます。ああ、このイケボに毎朝起こされたい。まあ、起きるのいつも昼だけど。 「……んん、氷室しゃん、おは」 「うわー、寝起きブッサイクー」 「ブ、ブサイク!?!?」 一気に目が覚めて、慌てて顔を手で隠した。 「うっそー。可愛いよ」 氷室さんは笑って、わしゃわしゃと私の頭を撫でる。不意打ちだ。 ほっぺたがかあっと熱くなった。うう、しばらくは顔から手を離せんぞ、困った。 「……そ、それよりもう着いたんですか?」 顔を隠したまま、モゴモゴ尋ねる。確か高速の途中のサービスエリアで、トイレタイムが設けられていた気がしたのに。 「うん。俺らがぐっすり寝てる間に着いちゃった。ほら、見て。海」 氷室さんが指さす窓の外に視線をやれば、少し先に、白い白い砂浜と、眩しい太陽を反射してキラキラと光る水面が見えた。 「うわあっ! 海! 太陽! ビーチ!」 「なにそれ、急に単語しか言えん病気?」 「だって! 夏!」 「あはは。俺らも降りよ。もうみんなバス降りて待ってるから」 そう言ってまた頭を撫でるから、私の顔もまた夏の日照りだ。困るけど嬉しいけど困る。
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