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「おま、汚ねっ! 唾!」
「だって! なに今の顔! ひょっとこ!?」
「え、これそんなオモロイ?」
氷室さんは首を傾げると、もう一度さっきの変顔をしてみせる。
「うははははは。まじ、お腹痛いっ!」
ケタケタ笑い転げていたら、不意に氷室さんの手が頭にポンッと降ってきた。
「飯、食えそ? 無理しなくていいけど」
あまりに優しい瞳で見つめられて。今度は心臓がきゅうっと痛くなった。
「……は、はい」
「じゃ、行こ。早くしないと閉まっちゃう」
言いながら先に立ち上がった氷室さんが、私の前に手を差し出す。
い、いいのかな……いいんだよね?
きっと、私の具合がまだよくないから、手を貸してくれるのだ。
目の前の手を遠慮がちに握ると、その感触を堪能する間もなく、すぐに体ごと上に引っ張られた。
「あ」
勢い余ってよろける私。それを、彼がさっと支えてくれて。
結果、軽く抱っこされてしまった。
…………うん、ダメだ。これ死ぬね。
ドキ死するとか、そういうことではなく。
いくら確変中だからって、こんなのラッキー過ぎる。もはや怖いレベルだ。
もしも確率が収束を始めたら……。
そう、パチンコが大連チャンのあと、大ハマリするように。このあと、とてつもない不運が待っているに違いない!
「……ひ、氷室さん。私、もうすぐ死にます」
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