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氷室さんは、私の話に「一等すげー」とか「温泉ええのう!」とか「ペアなんだ?」とか、十分すぎるリアクションをくれた。 「で、とりあえず誰か誘ってみたの?」 「あー、一応。なけなしの女友達2人にLINEしましたけど、休み合わなくて」 「あはは、なけなしって。……ね、それっていつ行くつもりなの?」 「えっと、私、来週末2連休なんで、その初日に行こうかな、なんて」 「ふーん、来週末ね。それ…………あ」 氷室さんは言葉の途中で突然歩き出した。少し先のスロットのシマの端で、コールランプが光ったからだ。 私も気づいたけど、彼が動き出す方が一歩早かった。なんだか申し訳ない。仕事中だってのに、氷室さんと話しているとつい浮かれて、視野が狭くなってしまう。 嗚呼、まさに恋は盲目。あなたしか見えない。 ……なんてバカなことを考えていたら、スロットの別のシマでコールランプが点滅した。慌ててそちらに向かえば、台がホッパーエラーを起こしている。 メダルを補給すればエラー解除。台の扉を閉めたら、途中だった演出が画面上で再開された。 パンダがペアで温泉に入っている小役演出。 ……ちっ、ペアで温泉かよ。 可愛らしいパンダにも、もはやイライラしかしない非リアな私。
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