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いよいよやって来た、バスツアー当日。
準備は万端。空は快晴。朝から夏らしいジリジリした日差し。大丈夫、日焼け止め塗った。
でも……コンディションは最悪だ。だって一睡もしていない。
昨日は新台入れ替えで、明け方まで仕事。家に帰ったのは5時前だった。なのにツアーの集合時間は7時。寝る暇なんてない。
いやいや、そんなことよりも!
どうしよう、一緒に旅行なんて昇天しそうなほど嬉しい。でも、でも! いざ1日一緒にいるとなると、もう今からドキドキが止まらない。
え、バスもずっと隣!? キャー! 心臓破裂する!
彼の顔を見る前にドキ死しそうだ。え、ドキ死ってなに? 溺死の仲間?
「なに百面相してんの?」
頭の斜め上から、よく聞き慣れた声が響いた。
「あっ……お、おは、おはよう、ごまっ!」
……噛んだ。
「ごま? 何それ」
からかうような視線を投げて、氷室さんは隣の座席にどっかりと座る。
「今日1日よろしくね、ごまちゃん」
眩し過ぎる笑顔がすぐ目の前に……って、あれ、バスの隣同士、思いのほか近い!
やっぱり私、今日ドキ死するかもしれない。
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