嫌いなものは嫌いと知ってくれ

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「……」 ゴキブリは言葉を失った。全身油でコーティングしているから綺麗と言うアイデンティティーを打ち砕いたのだから当然である。 「基本、お前らはシロアリやイナゴみたいに人間の経済に害も与えないしな」 「そうですよ、僕ら人に対しては基本無害なんですよ」 シロアリと違い木材を食べて家を倒壊させることもないし、イナゴのように農作物を食べることはない。ゴキブリが人様のものを食べるのは放置された生物(なまもの)に少し気をつければ害ということはない。 「悪いんだが、やっぱり見た目のせいで嫌われると思うぞ」 「人はやっぱり見た目で判断するんですか…… ろくでなしですね」 「嫌われたくなきゃ日本の北海道に行くんだな。北海道はゴキブリがいないから嫌ってるやつはあまりいないらしいぞ」 「なんですかその理想郷(シャングリラ)」 「地上の楽園みたいな言い方しやがって」 「人が僕らを嫌わないだけで素晴らしいところですよ」 「まぁ、そこのヒトもいつDNAに刻まれた太古の記憶が蘇るか知らんが、せいぜい見つからんようにな」 「太古の記憶ってなんですか?」 「人間って言うのは猿から進化する前にはネズミのような姿だったんだよ。そのネズミだった時にお前らゴキブリに食われてたらしくてな、その恐怖がDNAのエクソンになってて、今も残ってるからゴキブリを見ると謎のゾワゾワ感が出るとされているんだ」
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